NYの薬局: 良く処方される薬は? ①肌感覚編 (2)
こんにちは
今年もアメリカ (NY) の薬局事情を退役薬剤師目線で書いていきたいと思います★
毎回NYと強調?するのは
アメリカは州によって法律やシステムが全然違くて
NYは一番規制が厳しい州の一つだから。
で
大分日が開いてしまいましたが
前回のつづきです
【抗うつ、抗不安、睡眠】
日本でもよく見ましたが
アメリカ・・・多い・・・
処方も日本よりきっと気軽にされてると思う。
NYではコントロールに指定されているものは
最長30日サプライかつリフィル不可ですが
コントロール以外はたまに結構大量にでて、
ちょっと怖い
PMSなどの場合もあるし、勿論全員が鬱ではないんだけど、ね。
(因みに歯医者や手術前に一日分とかで出ることもしばしば)
一番多いのは
セルトラリン (英語ではサーチュリン。日ジェイゾロフトⓇ、米ゾロフトⓇ) と(エス) シタロプラム (日米ともにレキサプロ)、フルオキセチン (日米ともにプロザックⓇ) あたりでしょうか。どれもコントロールには指定されていません。
↓プロザックⓇはドラマに普通に出てくるくらい有名(?) - The Sopranosより
鬱・気分障害 (サーチュリンはPMSにも使われているよう) やパニック、不安感、PTSDなどにも。結構若い方 (学生) 多いなぁという印象。
アメリカは本当に向精神薬の種類が多くて (日本もほぼ同じはずだけど)、よくもまぁこんなに色々あること!なんていつも思います。
コントロールになっているのは睡眠薬のゾルピデム (日マイスリーⓇ、米アンビエンⓇ) や癲癇含め様々な症状に用いられる (アメリカではパニック障害と癲癇) クロナゼパム (日リボトリールⓇ、米クロノピンⓇ)、ジアゼパム (ダイアゼパムと発音。日セルシンⓇ、米ヴァリウムⓇ)。
また、オピオイドとの併用でアメリカでもかなり問題になったアルプラゾラム (日ソラナックスⓇ、米ザナックスⓇ) も多いです。
ザナックスと言えば・・・
Trumpが大統領になったことによるパニック・不安から「今すぐザナックスをちょうだい!」と歌うパロディ動画 (普通に面白いwwwすき)。ガチで飲んでる人は笑えないかもだけど、それくらい社会に認知されている薬なんだなという・・・。
これは2017年のイノギュレーションのときに出た動画だから本当になりたての時。
まだ笑えてた時期でしょうか・・・^^;
アルプラゾラム自体はかなりよく使われる薬で、使用用途も広い (筋肉のこわばりなどにも) のですが、少なくともNYではアルプラゾラムやその同種薬 (ベンゾジアゼピン系という) がオピオイドと併用される場合は医師に確認をするような警告がシステムで表示されます。
一方日本でかなりよく見たエチゾラム (デパスⓇ) などは
アメリカでは違法ドラッグになります!
↓DEAの管轄になっちゃいますよ
https://www.deadiversion.usdoj.gov/drug_chem_info/etizolam.pdf
日本で飲んでいる方は渡米の際には念のため医師の英語の診断書が必要。
(薬により規制量が異なる。渡航先によっても異なる。向精神薬は国によってルールがかなり違うようなので要注意です!)
日本でもつい最近滋賀でのオーバードーズ (OD) がニュースになりましたが・・・
薬単体というよりも、量は勿論のこと、飲みあわせはかなりクリティカルよね・・・
アメリカはオピオイドODがメインだけど
日本は向精神薬ODが多いとどこかで読みました。
どちらにしても哀しいですね。
薬をつくる研究者は一人でも多くの人を助けたくて必死に研究して送り出すのに
間違った使い方をされて人の命を奪い、家族や友人を悲しませる。
正しく飲んでほしい・・・
【ピル・ホルモン薬】
ピルの処方凄い多い!というかピルの種類が凄く多くて難しい笑
エストロゲン、プロゲステロンやテストステロンなどホルモン薬も多いです。
ホルモン薬は用途も色々違うと思うけど、アメリカだなぁと思うのは性転換された方への処方を見ることが少なくないこと。
男→女の方、凄い綺麗にお化粧してたりお手入れしてたりオシャレしてて
素敵な方多いです。女に生まれた私より全然女!
奥さんとお子さんと一緒に来るかたもいて
コントロールだったからIDをお願いしたんですがIDの写真がまだ男のままで
お子さん「え~パパ全然ちが~う」
お父さん (女に転換) 「昔の写真だね~」
なんて凄いオープンであったかい雰囲気の会話もされてました。
奥さんも超普通に接していて、当初はきっと色々あったかもだけど
なんだか幸せそうだなぁなんて思いました。
あ、因みに避妊失敗しちゃったかも・・・というときの緊急避妊薬はPlan B といえば処方箋なしで買うことができます。
【禁煙補助薬】
これ、今日本はどうなのか知らないんですが
アメリカかなりおおいです!
OTCの扱いだけど、ニコチンガムとロゼンジ (トローチみたいなの) が凄くよく出ます。
ちょいちょい患者さんでも凄いヤニ臭い人がいて
お互いマスク+しきりなのに凄く臭い・・・
大体癖の強い薬をとりにくる+態度が悪め+小汚い感じ人が多いです・・・(言い方悪くて申し訳ないですが)。そして大体会計を拒否されます (Medicaid NYは会計拒否できる)
↓MNYのwaiveについても軽く触れてます
また、飲み薬としてブプロピオン (日米ともにザイバンⓇ) が禁煙補助目的に使われることも少なくないです (抗うつ目的にも)。
【鎮痛薬】
コントロールではない鎮痛薬
アメリカでは日常的な鎮痛薬の多く (アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェンなどのいわゆる解熱鎮痛) はOTCが多いです。なので、処方箋で出る鎮痛薬はOTCのものより強い力価か、慢性疼痛などに適応があるものがおおいです。
なので、実際はコントロール以外の鎮痛薬はあまり多くないんですが、片頭痛の薬は結構出ます。スマトリプタン (日イミグランⓇ、米イミトレックスⓇなど) はかなり多い。
Photo by Matteo Vistocco on Unsplash
日本では結構湿布薬をみたんですが、アメリカでは見ないですね~文化?
リドカインという表面麻酔の湿布くらいかな。
医療用オピオイド
オピオイドとはケシの実から抽出されるモルヒネ (モルフィン)、を核としてオキシコドン、コデイン塩、フェンタニル、メサドンなどのグループ名で、いわゆる「オピオイド骨格」をもっていて、オピオイド受容体に結合するものが当てはまります。
因みにヘロインは日米ともに非合法。
オピオイドの殆どはアメリカではもっともコントロールが厳しいClass II (CII) というカテゴリーになっています (CIIは日本でいう医療用麻薬と同じような厳重な扱いで薬剤師がカギのかかる棚に保管します。使用ごとに取り出した数、残りの数を記録し、数が合わない場合は届出が必要になります)。
ただし、オピオイドの中でもトラマドールとブプレノルフィン (スボキソン) は一段階下のClass IVです。トラマドールは慢性疼痛、ブプレノルフィンはオピオイド依存治療などに使われます。どちらも薬局で出るトップ15には入りそうなくらい処方数が多いです。
オピオイドは間違った使い方をすると依存性、最悪の場合ODに陥ります。
日本はかなり厳しく、日本人の我慢強い性格?もあって医療用では安心して使われているので不安はあおりたくないんですが・・・。
アメリカはかなり問題で、実際にオピオイドクライシスと呼ばれていたり、政治の重大な論点にもなってます。
NYSではオピオイドによるODの唯一の治療薬であるナロキソン (ナルカンⓇスプレー) は処方箋薬でありながらも、処方箋なしに薬局で買えることになっています。
Availability of Naloxone in Pharmacies
NYSではオピオイドODがかなり深刻なので、ナロキソンは無料またはかなり低いco-payで手に入ります。
【その他のCII】
ADHD治療薬
"私が薬剤師をしていた頃に比べて"ですが、
圧倒的にアメリカで多いなと思うのはADHD治療薬のメチルフェニデート (日米ともにコンサータⓇ) とデキストロアンフェタミン (アデロールⓇ ※日本では違法) です。やはりアメリカのほうが社会認知度が高く (日本でもここ10年くらいでかなり認知度が上がったと思うけど) ADHDの診断を受ける人が多いんでしょうか。
成人の方の場合、飲み方の指示でも「朝仕事にいく前に集中するために飲むこと」なんていう文もよく見ます。
感覚的なので間違ってるかもだけど、アデロールを飲んでいる方のほうが「次はいつdueですか」とか「アデロールの処方箋届いてる?」とか「due前に貰ないか」とか、ちょっとdesperateなかんじがします。
また、これらはナルコレプシーという、日中に異常なレム睡眠発作を起こす患者さんの治療にも用いられます。(メチルフェニデートはコンサータⓇとは異なるタイプのリタリンⓇが用いられる)
フランスの私の知り合いで二人ナルコレプシーの友人 (フランス人とイタリア人) がいました。感情が高まる (とくに笑いすぎたりしたとき) と特に発作が起こりやすくなり、小さいころにはよく膝からがくんと崩れたそうです (友人同士で凄い笑いあって盛り上がったときに、何度か「あ、発作きそう」って言ってたことがあった)。
ナルコレプシーでは夜間の睡眠の断片化もおこり、深い眠りにつきにくくなることも分かっていて、彼女の場合は強力な睡眠薬を夜飲むことと昼間に少し昼寝をすることで発作をかなりコントロールできていました。
いかがでしたでしょうか
かなりの大ボリュームになってしまいましたが
以上が肌感覚での「よくでるな~」という薬です。
日本の薬局、平和だったなぁ・・・笑
今日もここまでお付き合いいただきありがとうございました。
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